前置き
最近の俺 三つの出来事!
一つ!TTYO配信が今度こそ始まるかもしれないしカブトの感想を全話分書こうと意気込む!
二つ!着手するも全49話は膨大だった!
そして三つ!記事に入れる画像作りの方が楽しくなり画像作りに逃げてしまった!
というわけなのでジオウの感想で肩慣らしをしようと思います。
基本的に人名は敬称略・ネタバレ配慮は無しで行くので、それが嫌な人はこの記事より本編を見よう。
そしてジオウで肩慣らしと言ったがジオウを全話見たわけではないので物凄く頓珍漢なことを言っているかもしれない。なので、あくまで「カブト編」の話に絞り、ソウゴ一行や門矢士、タイムジャッカーがどうといった「ジオウ」自体の大筋やキャラクターについてはなるべく無視をするものとする。
PC版テーマはかっこいいがどれがリンクがわかりにくい。このように白く光るのがリンクである。読みにくかったら申し訳ないが携帯から見てほしい。
ジオウは正史か
カブト編は例によって時空の歪みが発生している。そのため、カブトの歴史は消えていないし、加賀美も変身するし、世界が合体している感じになっている。冒頭で説明があり、わかりやすい。
らしいが、全話見ているわけではないのでジオウの設定のことは置いておく。俺が気になっているのは後半のレジェンドは本編と地続きの存在なのかということだが、この記事では基本的にカブト本編を元に記述するものの、剣編などのこともあり、俺自身はジオウのレジェンドライダーはあくまで限りなく本編に近いルートを通ったジオウ世界のレジェンドであると考えている。
カブト最終回ではZECTは消えたとしか取れないのに加賀美がまだZECTはあるっぽい感じで話しているのこそがその根拠だ!というのは流石に根拠が弱すぎるにしても、制作当時想定されていた未来ではないだろう(≒後付け続編)という意味でもifの存在としたい。カブトの続編とはバンコクで加賀美が荷物をスられる話のことであるはずである。
まあ、都合の悪いことを誤魔化すための脳内設定なので、気にしなくていい。それに、俺が見てないジオウでその辺明示されてるのかも……。
脚本:毛利亘宏 監督:山口恭平
アナザー影山
アバンパートでいきなり登場する影山に擬態したワーム、通常アナザー影山。もう許してやれよ……
誰かの外見を笑うのは本来非常にセンシティブなのでアナザー影山ネタは影山を演じた内山眞人氏の寛容さの下に成り立っていることを忘れてはいけない(教訓)*1。たっくん短髪事件に続く弾丸オファーの悲劇である。
ワームとアナザーライダーの性質をダブらせるような呼び方は好きだがいかんせんイジリ要素と切っても切れない呼称なのでなんか微妙に申し訳なく、使いづらい。なのでこの記事では大人しくワーム影山と呼ぶ。
偽りの絆
加賀美「矢車と影山はコンビなんだ。地獄兄弟と言ってね」*2
ソウゴ「兄弟なの?」
加賀美「兄弟じゃない」
参照:「仮面ライダージオウ」第37話
それは違うよ!(ダンガンロンパ並感)
まあ血縁的な意味ではその通りなんだが。地獄兄弟の話になると厄介オタクが目覚める。
まあでも兄弟じゃないのかもしれない。天道総司・風間大介・神代剣など、ライダー達の個性と個性がぶつかり合うような番組であるカブトにおいて、矢車・影山は確固たる芯を持たない人物として描かれていた。
初登場時点では矢車を盲目的に慕い、矢車を失った後はどれだけ無様を晒してもシャドウ隊長の肩書にしがみつこうとした影山はわかりやすいが、矢車も「自分を出し抜く天道を倒さなければ俺が俺でなくなる」(≒部下や組織から必要とされなくなり価値を失うという意味もある?)という恐怖に取り憑かれたようにアイデンティティの不安定な男である。(まあ、なんなら天道総司もアイデンティティの不安定な男と言えるのだが、この話は本編レビューの方でまとめたい。なんか急にカブトのテーマだったような気がしてきた)
カッコよすぎでもなく、悪すぎでもなく、いい人すぎでもなく、キャラが濃いような、うすいような……。最初の時、石田監督から「すごく難しいんだけど、「地味」で行きたい。それが崩れていく……」という話を受けました。
徳山秀典さんインタビュー(後編) - 東映サイト
とにかく、カブトキャラの中ではキャラの濃い方ではないというか、普通だった矢車隊長。そして最早芯のなさが芯になるレベルで己を持たない影山。矢車より上の地位に立った影山は用済みとなった矢車を追放し彼の心をへし折った。そんな二人がなぜ地獄兄弟になったのかと考えると、彼らはどこまで行ってもZECTの犬であったからだと思う。天道に代表されるように「俺は俺」「俺の価値は俺が決める」的なキャラクターの多いカブトだが、組織人として描かれる矢車・影山の二人は他者からの評価に主軸を置いている。地獄兄弟とは、色々あったが結局は上に立つ人間に付き従っていたい影山と色々あったが結局は誰かからの承認を得ていたい矢車の要は利害の一致で、更に言えばエリート同士の傷の舐め合い、そしてごっこ遊びである。その点では、兄弟ではないのかもしれない。
いや……それは違うよ!
取り消す。地獄兄弟は兄弟だ。矢車が影山を引き入れたのは道連れにしてやるという意味合いが強かっただろうし、影山にとってもなんだかんだ一番良かった頃であろう矢車ザビー時代のやり直しに過ぎなかったかもしれないが、本編第40話にて失恋し消し飛んだ矢車を今度は影山が迎え入れたことによって二人は本当の兄弟になったのだ。なんて感動的なんだ……。
ところでジオウの地獄兄弟はどうか? 言うまでもない。偽物だ。
ゲイツ「矢車!どこへ行く!?」
矢車「弟のところだ。影山は俺が守る」
ゲイツ「待て!あの影山はもう……」
矢車「ワームだったらなんだってんだ……!俺の、可愛い、弟だ……」
参照:「仮面ライダージオウ」第38話
矢車はこんなに影山に優しかっただろうか? それは違う。優しくなってきたのは大体40話以降の話であり、それまでは殴る蹴るは当たり前、40話以降もそう露骨に甘やかすことはなかった。44話のみんな大好きトリプルライダーキックのシーンで影山の仇を取ったのも、本人の前ではつっけんどんにしつつも裏でこっそり敵を取りに行くという隠れた優しさである。本編の矢車は間違っても影山の前で「お前さえいればそれでいい」なんて言わなかったはずだ。矢車は生前の影山に言ってやれなかったことをワームの影山に言っているのである。
ワーム影山は同胞の招致のために矢車を利用し、矢車は弟殺しの罪から目を背けるためにワーム影山を利用する。最初は利用し合う関係であったとしても最終的には同じ夢を目指した真・地獄兄弟に対し、どこまでも平行線である偽・地獄兄弟は地獄兄弟ごっこの域を出られない。
非情の街に狼の歌を
「カブト」本編において、大切な人がワームだったらどうする?というのは、加賀美新と加賀美亮に始まり、じいやと神代剣、風間大介と間宮麗奈、そして、天道総司と日下部ひより・矢車想と影山瞬——と、幾度となく描かれてきたテーマだ。たとえば、
弟と同じ顔と記憶を持つワームに少なからず情が湧いてしまうも、最後には弟を愚弄するワームを倒す決心をした加賀美。
剣を殺した張本人であるワームが擬態した剣に対し本物の剣と同じように接し、その最期を看取ったじいや。
人間の心を取り戻した間宮麗奈/ウカワームと恋に落ちるも、彼女との約束を守り自らの手で葬った大介。
憎むべき敵であるワーム(ネイティブだけど)に身を堕とし、それでも人間として死にたいという弟の願いを飲んだ矢車。
そして、ワームであろうとたった一人の大切な妹を守ると誓った天道総司。
これらを全部まとめて歪めたのが今回の地獄兄弟だ。弟の顔と記憶を利用するワームに依存し、過去の後悔を取り返すべく本物以上に優しく接し、もしもの時は自ら倒すと宣言するも実行できず、たった一人の弟の偽物を必死に守る矢車。
彼はまさしく「アナザーカブト」なのだ。
矢車「影山……お前地球滅ぼそうとしてんのか?」
ワーム影山「ああ……もっと地獄にしてやる。兄貴は反対かい?」
矢車「いやあ……俺はお前さえいりゃそれでいい」
参照:「仮面ライダージオウ」第38話
(かつてのように二人で兄弟ラーメンを食べる矢車とワーム影山。「食」が重要な要素として描かれていたカブトにおいて、ワーム影山がラーメンに口をつけないのは示唆に富んでいる)
「カブト」最終回の終盤ではおそらくラストバトルから数ヶ月~数年が経ち平和になった世界が描かれ、ネイティブであるひよりや田所は人間社会でいたって平和に暮らしている。そして、地獄兄弟の結成後は所謂縦軸に一切絡まない蚊帳の外の存在となった彼らは三男として迎え入れた剣がワームであることも彼が死んだということも知らない*3。一度は惚れた相手であるウカワームの死も知らないだろうし、ZECTがネイティブと手を組んでいたことも知らないだろう。なんならネイティブの存在すら知らなかった可能性もある(ホッパーゼクターは対ネイティブ兵器とされているが……。少なくとも影山は何も知らないと思う。)。
ネイティブの謀略により化け物にされてしまった弟をそうとも知らず葬った矢車が全ての真相を知ったとき彼は一体何を思うだろうか。矢車がああなるのは違和感があるという意見も見るが、ZECTはおそらく解散、トップであった加賀美陸やネックレスを配った加賀美達は不問、悪のネイティブは既に天道によって殺されており、終いにはネイティブにされたZECT隊員が自らの意思で人間に戻り、ひよりのようなイノセントなネイティブも社会に受け入れられ平和に暮らしているとくれば、矢車がワーム影山に囚われているのも、ワーム影山と共に地球を滅ぼそうとする……というより地球が滅ぼうがどうでもよさそうなのも個人的には違和感はない。
ジオウカブト編が好きな理由としては、言葉は悪いがご都合主義感が強く納得のいかなかったラスト3話の「まあそりゃそうなるだろ」という続きが描かれたというのも比重としては大きいかもしれない。謂わば矢車はハッピーエンドに見捨てられた存在だ。
激論青カブ
「カブトにえらばれしもの」では、アナザーカブトを倒すべく加賀美がカブトに変身する。
今なおあれはアリかナシかで意見の割れる存在・加賀美カブトである。良くも悪くもジオウカブト編=加賀美カブトとして語り尽くされ堂々巡りしている話題なのであえて触れる必要性をあまり感じないが、触れておこう。
まず、俺の意見を述べると、加賀美をカブトにするなという考えは微塵も持っていない。なぜかというと、まずカブトはもっと資格者がよく変わる555みたいな話にしたかったとか。それに、加賀美が天道の力を借りる展開自体はアツい。カブトとガタックは変身者が決められているからと言っても、ゼクターは気まぐれであるし、ネイティブの陰謀から解放されているのであれば尚更だ。そして何より、
- カブト編をやるが、水嶋ヒロにはオファーを出さない。(出せない?)
- カブトアーマーもない。
- でもアナザーライダー討伐用にカブトのなんかを出さないといけない。
- 佐藤祐基の出演は決まった。
- 加賀美をカブトにしよう。
こういう流れだったことが予測できるからだ。「インスタで触れてるんだからオファーがあれば出たに違いない」とか「FOREVERで使えたんだからライブラリ出演させればいい」とか「天道の存在を匂わせる描写を入れればいい」だとか様々な意見を見るが、俺が思うのは、仮面ライダーは映像制作会社・テレビ局・玩具会社・原作のライセンス管理会社・出版社、さらにはタレント事務所など様々な企業が絡む知的財産であり、テレビシリーズはその販促番組であり、で、テレビシリーズは瞬間瞬間を必死に生きている。俺が考えた最高の展開や折衷案を必ずしも実現できるとは限らない。カブト自体様々な事情から実現できなかったであろう要素が多い。プロデューサーの白倉伸一郎はカブトは反省点の多い企画だったと語る*4。
そして、結婚・KAGEROU・事務所退社・ポプラ社大賞など、カブト以降の水嶋ヒロを取り巻く状況は非常に複雑かつ不明瞭なので彼に関することを断言するのは控えるが、一つの事実として、仮面ライダーカブトのBlu-rayにはDVDに収録されていたキャストインタビューが再録されているのに、主演である水嶋ヒロのインタビューのみ収録されていない。備考として、当時は表舞台から完全に姿を消していた*5ひより役の里中唯のインタビューは収録されている。さらに、前作「響鬼」のBD(主演俳優が元事務所に冤罪をかけられた事件の後に発売)は主演俳優の撮り下ろしインタビュー映像が収録され、次作である「電王」のBDではブックレットに主演俳優の新規インタビューが掲載されている。
そして、「平ジェネFOREVER」においても彼にはオファーすら届いていない(ソース。インスタの返信はログインしないと見られないので貼れるリンクが週刊誌のコタツ記事になってしまうんだが…。)。
ジオウの時に少し話題になった水嶋ヒロが現在の生き方を語るカブト編のちょうど半年前のインタビューがある。併せてこれも読んでもらいたい。長くなってきたので水嶋ヒロについてはこの辺りで切り上げるが、水嶋ヒロの天道はまたどこかで見たい。短い仕事ならやれるという発言からしても水嶋ヒロ自体はオファーさえあれば出てくれる可能性はあった分、それすらなかったというのは残念だし、なかった理由が仮に芸能界のしがらみに由来するとすれば尚のこと残念で仕方がないし、カブト編面白いけど水嶋ヒロにオファー出してないんだよな…というノイズになっていないと言えば嘘になってしまう。ともかくみんなヒロメシをみよう!
話を戻して加賀美カブトだが、多くの人が触れているカブトに未練のある加賀美はなんか違うんじゃないかという部分については、激しく同意する。
加賀美の有名なセリフといえば、「俺は俺にしかなれない。でもこれが俺なんだ。」であろう。だがそのセリフについては加賀美カブト論争において死ぬほど擦られた後なので、今回はあまり触れられていないてれびくん謹製超バトルDVD「誕生!ガタックハイパーフォーム!」の話をする。これは最近なぜか真骨彫になったハイパーガタックが初登場した作品*6で、なぜか喋るカブトとガタックのゼクターに見守られつつ加賀美が天道に近づくため頑張るという内容の短編である。響鬼とネタ被ってるとか言ってはいけない*7
このDVDのオチも要は「天道は天道、加賀美は加賀美」みたいな感じで、加賀美が改めて「俺は俺だ!」という結論に行き着くというものである。マジの子供向け番外編なのでかなりギャグ仕立てなのだが、「先を行く者とそれを追う者」としての天道と加賀美をよく描いた短編なので非常におすすめ。天道総司5つの秘密!の謎のイメージ映像となぜか真骨彫になったガタックのハイパーフォームも必見。
また話を戻すとして、そんなこんなで加賀美はまだカブトに未練が…というのは俺的にも納得のいかないポイントだった。天道を越えたいならばともかく、「カブトゼクター……俺を認めてくれるのか?」と、「カブトに選ばれなかったこと自体に未練がある」というのは全くもってピンと来ない。
二行で済むことをこんなに長々と書いたのか……。他にも、カブト編の好きじゃない点を敢えて挙げるとすれば、矢車さんの川下りもそうだ(その後のゲイツとの会話シーンは徳山氏の演技にアスファルトに頬擦りしていた頃の不気味な矢車の影を見たということもあり非常に好き)。意味のないシーンを入れればカブトっぽくなるというのは違うのかなと思った。
逆に、よかった小ネタはやっぱりOP入りのデッ!デデデ!だ!初見の時は超びっくりした。
虫けらどもに寂しい春を
俺たちは永遠に二人で……地獄を彷徨うんだ……!
そしてついに決戦の時が来る。万が一の時には影山を倒すとゲイツに話していた矢車だが、やはり矢車には影山と同じ形をした存在を再び殺すことはできなかった。矢車に代わり、ゲイツがワーム影山に手を下す(先述した通りカブト4話の展開にダブる)。パンチホッパーの変身が解けた影山を守ろうと走った矢車を今度は加賀美カブトが仕留め、カブトのアナザーウォッチは消滅。ワームの乗った隕石もツクヨミのお陰でどうにかなった。再び「カブト」にハッピーエンドが訪れようとしている。
ワーム影山「俺の……仲間達が……!」
矢車「影山……もう一度、兄貴って……呼んでくれよ……」
ワーム影山「俺は影山じゃない……。お前は俺の、兄貴なんかじゃない……!」
参照:「仮面ライダージオウ」第38話
加賀美に敗北し負傷した矢車には目もくれず、真っ先に同胞であるワーム軍団が殺されたことを気にかけるワーム影山。姿こそ影山のままだが、大切な兄貴よりも「仲間達」と自分の野望を優先する姿はもはや擬態を解いたワームそのものだ。そんな一匹のワームに対し、矢車は「もう一度兄貴って呼んでくれよ」と縋る。
だが、矢車に与えられたのは「お前は俺の兄貴なんかじゃない」という言葉だった。
死の直前に兄を呼んだベルクリケタスワーム(加賀美弟)、最期には加賀美を守ったタランテスワーム(まことくん)、人間の心を取り戻し風間大介と恋に落ちた*8ウカワーム(間宮麗奈)、擬態元の強い意思に影響されて自身がワームであることにも気付かないまま姉を仇を取るために戦い、最期には自らの仇も取ったスコルピオワーム(神代剣)と、「ワームの意思が擬態元の人間の心に負ける・影響を受ける」という描写も多かった「カブト」なので、このシーンにもさまざまな説がある。
具体的には「影山の意思がワームに影響を及ぼし、矢車を解放するために言った発言」「ワーム影山が矢車の目を覚まさせるために言った」など。無論どれも嫌いではない。だが、俺の考えを述べるとすれば、あれはワームの本心であると思う。擬態元である影山も、影山に擬態したワームもどこまで行っても利己的な奴だ。ワームが自身の野望が潰えてこれから死ぬという時にずっと利用していただけの矢車を気遣えるとも、自分のためにしたことも誰かのためにしたことも空回りし続け、小説版では一人で死ぬのは寂しいからと矢車との心中を望んでいた影山が気の利いたことを言えるとも思わない。
ともあれ、矢車は再び弟を失った。ワームにとっての矢車は兄貴でもなんでもないただの計画のための駒に過ぎなかったが、矢車にとっては可愛い弟だったのだ。
矢車「笑えよ。誰か俺を、笑ってくれよ」
ゲイツ「矢車……すまない」
参照:「仮面ライダージオウ」第38話
矢車は自嘲して何処かへと去っていく。ここのゲイツの「すまない」が良いよね。ゲイツすき。こうしてワームは殲滅され隕石騒動も無事に終結、アナザーウォッチは破壊され、ソウゴもカブトのウォッチを手にすることができた。再びカブトのストーリーにハッピーエンドが訪れ、矢車はまたもハッピーエンドから見放された。
そしてライドウォッチになったカブトゼクターだが、ラーメンを作ってくれたりもするカブゼクの意思はどこに。変身アイテムが生きてると若干不安になる。
風が運ぶ春はよけていく
加賀美には悪いが、俺の矢車贔屓を抜きにしても、ジオウカブト編の主役は矢車だったと言わざるを得ない。
矢車は最後夕日に向かって歩いていく。夕焼けというのは本編におけるカブトvs矢車ザビーのロケーションであり、そして「カブト」においてカブト/天道は太陽に喩えられた。いよいよ誰にも救えない存在となった矢車を太陽が照らしているというのも皮肉なものである。お天道様が見ている。
カブト編における矢車は怪人アナザーカブトであり、「仮面ライダーカブト」のアナザーであり、天道のアナザーでもあった。
こうして書いて改めて思ったが、やっぱりカブト編はかなり好きな話だ。加賀美の描写は納得のいかない点が多いが、地獄兄弟というか矢車の描写はとても好きだ。ワームと人間、兄と弟・妹というカブトのテーゼを裏返しまとめた「ジオウ」。そして何より軽いノリで宇宙に行くのに米村イズムを感じる。どこが良かったか?などを再確認できてよかったし、何よりほぼ地獄兄弟の話だけで10000文字書けたことに驚いた。
最後に、はてなブログはJASRAC管理楽曲の歌詞の掲載を認めていることなので、締め方も思いつかないことだしこの歌を引用して良い感じに記事を終えたいと思う。カブトの話をするならば俺もポエマーにならなければならない。地獄兄弟の元ネタになったドラマ「傷だらけの天使」最終回の挿入歌だ。
夢のような過去は消えてゆく
一人だけでただ歩く もう誰もいない
風が運ぶ春はよけていく
一人だけでまだ歌う この俺を笑う
「一人」デイヴ平尾/井上堯之